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法的性別取扱い変更要件に関する2023年2つの裁判決定とその影響について

 2024年1月11日、当協議会の定例勉強会は、昨年の静岡家裁における性別取り扱い変更申立て裁判の弁護団の一員として活躍した水谷陽子弁護士にご講演をいただきました。とても重要な内容でしたのでここに情報公開しておきたいと思います。

 2023年10月11日静岡家庭裁判所浜松支部はトランス男性(FTM)が戸籍の性別変更に関する特例法4号要件「(生殖機能欠如)生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」(この場合は子宮卵巣摘出)の無効を求めた申し立てに対して、この要件は違憲無効と判断しました。この判断によってこのトランス男性は子宮卵巣摘出を受けずに女性から男性への性別変更が完了しました。

 さらに、その2週間後の2023年10月25日最高裁判所は静岡家裁と同様に、特例法4号要件は違憲無効と判断しました。10月11日の静岡の判断は家裁でしたが今回は最高裁ということで今後日本全国のどの裁判所でも4号要件は無効として扱われることになります。

 したがって、特例法4号要件(生殖機能欠如)は事実上なくなりました。でも、注
意が必要です。最高裁の申し立てはトランス女性(MTF)からのものでしたが、5号要件(外性器類似)については十分な審理がなされていないということで高等裁判所に差し戻しになりました。

 以上まとめると、今後は
トランス男性(FTM)は、法律上の性別取扱い変更を目的とするのであれば男性ホルモン治療によって外陰部形態が男性化していれば5号要件を満たすので、手術を受けることなく性別取扱い変更が可能となります。(ただし、特例法1~3の要件は満たしていなければなりません。)

 トランス女性(MTF)の場合は、5号要件が無効にはなっていませんので、現状では今まで通りに外陰女性化手術(性別適合手術)が必要になります。ただし、今後数年単位で考えるとこの要件がなくなる可能性がありますので、その可能性を視野に入れながら、本人の経済力や希望する医療手段の優先順位なども考えつつ手術時期を検討する必要がありそうです。

関東ジェンダー医療協議会  理事長 百澤   明 
弁護士 水谷   陽子

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